「国絵図をつくる-東京芸術大学国絵図復元プロジェクトチームの報告-」

現在、山内資料館で行われています、「描かれた土佐藩~国絵図の世界~」展の関連イベントとして、10月16日(日)、山内会館にて「国絵図をつくる」と題した講演会が開かれました。
講師は、東京芸術大学大学院の荒井経准教授です。
講演内容は、東京芸術大学国絵図復元プロジェクトチームによる「元禄備前国絵図」(316.0cm×357.0cm)の復元作業の報告でした。
荒井准教授は日本画の実技を専門とされ、東京芸術大学大学院では古典絵画の模写や修復を基礎とする保存修復日本画研究室に勤務されています。
美術品でなく歴史資料として扱われている国絵図の復元にどうして日本画の専門家がと思われがちですが、実は国絵図の材料や一つ一つの技術も近代日本絵画の基本的な技術に通じるのだそうです。

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ひとことに復元といっても、これだけの大きさのものを制作することはかなり困難だったようです。
まず、描くための紙を準備する「紙拵え(かみこしらえ)」の作業だけでも、激しく伸び縮みする和紙で8畳近い巨大なものをつくることは予想以上に難航を極めたといいます。
制作作業のプロセスを検証していくことが今回の復元の目的であるため、原本と同じサイズ、同じ材料で行い、技術も当時行われたであろうとする方法で進められました。
その工程は・・・
 ・下図制作(原本の原寸大写真から写す)
 ・紙拵え(雁皮紙の継ぎ合わせ、裏打ち)
 ・線描き(下図転写)
 ・彩色
 ・文字の書き入れ(村名と石高、国境の説明など)
 ・耳折り(裏面に折り返した部分の糊付け)
 ・畳む(筋をつけ蛇腹に折り畳む)
という具合で、一つ一つの作業を知れば知るほど、大きな地図をつくることは、頭の中で考えるほど簡単な事ではないことがよくわかりました。
まして、今回の原本となった「元禄備前国絵図」は国絵図の中でも比較的小さなもので、江戸時代ではもっと大きなものが制作されていたのです。
その当時の技術力には驚かされます。

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(復元に使われた材料・道具の説明)

今回実際に復元作業を行って、どの作業にどれだけの時間や人数、空間が必要になるのか、またどんな専門チームが存在したのかを推測できたといいます。
意外にも、全工程の作業の3分の1もの時間を費やしたのは、山や樹木を細密な点描で描く作業だったそうです。
技術よりも忍耐力が求められ、なぜこんなに手間のかかる点描が使われているのかは復元を終えた今でも疑問だとか・・・・。
現代人と江戸時代の人々との価値観の違いなのでしょうか。
こうして具体的なことが分かってくると、当時どのようにまたどんな思いで国絵図を制作していたのか、いろいろと想像が膨らみます。
みなさんも現在、山内資料館にて開催中の「描かれた土佐藩~国絵図の世界~」展に来て、国絵図の魅力に触れてみませんか。
11月28日まで、会期中無休で開催しています。

 

*その他の関連イベント
 ・11月20日 14:00~16:00 「国絵図を描く-遍路札所の周辺-」
    ※要申込 参加費1500円

 ・10月23日、11月13日、11月27日 10:00~11:00 学芸員による展示解説
    ※要入館券

 (投稿者:K)

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