山内家資料修理説明会「文化財修理の現場-能管を解き明かす―」

11月11日(日)、「文化財修理の現場-能管を解き明かす―」と題して、昨年度修理を行った能楽器の一つ「能管」(=横笛)の修理説明会が行われました。

講師は、今回の修理を担当していただいた笛師の田中敏長氏と、以前当館が所蔵する能管の科学調査をしていただいたこともある東京文化財研究所無形文化財研究室長の高桑いづみ氏です。

まず前半では、田中氏から能管の修理過程とそこに用いられる伝統的な技術・材料について報告がありました。

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今回修理対象となったのは、当館が所蔵する6管のうちの3管で、いずれも巻きと呼ばれる部分が破損していたり、セミと呼ばれる装飾部分が過去の修理で間違って取り付けられていました。今回の修理は、これらを補修し、改善することが目的です。田中氏は、伝統的な能管の製作方法とあわせて、どのような道具、材料を使って修理作業を進めていったのかをスライドや、持参した材料を用いながらわかりやすく紹介してくださいました。

お話のあとは、田中氏自らが製作した能管と龍笛(雅楽で用いる横笛)の聞き比べを行いました。笛の製作や修理を手掛ける一方で、笛の先生もしておられる田中氏の吹く音色に会場からは大きな拍手が。両者とも外見は同じ形の笛をしていますが、聞き比べてみるとその音色の違いにびっくり、能管は高音で音程が不安定なのに対し、龍笛は能管よりも低音で音程が安定しているのがよくわかりました。

実はこの音色の違い、内部の構造の違いによるものだとか。能管には、喉(ノド)と呼ばれる薄い板が内部の空洞に挿入されており、これが他の横笛にはない、独自の音色を奏で、能の幽玄な世界を表現するのに適しているのだそうです。

後半では、この喉(ノド)をめぐって、高桑氏から報告がありました。

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能管の喉(ノド)がいつごろどのようなきっかけで設けられるようになったのかは、明らかになっていません。通説では、能管は龍笛から発展したもので、折れた龍笛を修理する際に、外見上みえないように継いだのがそもそもの最初ではないか?ということです。しかし、果たして本当にそうなのでしょうか。高桑氏は、この点に疑問をもち、X線透過撮影と呼ばれる科学調査を用いて、これまで全国の古い能管や龍笛の内部構造を検証されてこられました。

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この写真は、X線で見た山内家伝来の能管(上)と龍笛(下)の内部の様子です。
能管は口をあてる穴と指をあてる穴の間の空洞が龍笛に比べ狭まっているのがよくわかります。

講座では、これまで撮影してきた様々な能管の画像を比較しながら紹介していただきました。調査をとおして、能管の喉(ノド)の大きさには、時代や製作者によって、いくつかのパターンに分類できることが、新たにわかってきたそうです。しかし、肝心のなぜ横笛に「喉(ノド)」が設けられるようになったのかということは、まだ結論がでていないとのこと、今後の調査研究の進展が楽しみですよね。

最後は、能管の製作方法や構造について参加者からお二方の先生に対して活発な質疑も。
今回の会は、伝統的な技法を継承されてこられた製作者側の視点と、科学調査をとおして客観的に能管を調査されてこられて研究者側の視点、2つの異なる視点から能管に触れることができ、大変有意義な会になったのではないかと思います。

なお、今回紹介した能管の修理の経緯や工程、成果について、さらに詳しくお知りになりたい方は、研究紀要第10号の報告「平成二三年度山内家資料に係る資料修復事業」に掲載しておりますので、どうぞご覧ください。

(投稿者:K)

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