ふすま下張り解体講座

9月27日(木)、ふすま下張り解体講座にお邪魔してきました。

この講座は、ふすまの下張りを解体し、そこに使用されている文書を整理する講座です。
洋風の建築が増えてきた昨今では、そもそもふすまの「下張り」とは?という方もいらっしゃるかもしれませんね。

ふすまは、木枠に一枚紙が貼られてつくられているものではありません。
ふすまを解体してみると、下地骨と呼ばれる格子状の芯に、骨縛り(ほねしばり)、胴貼り(どうばり)、蓑掛け(みのがけ)、蓑縛り(みのしばり)、浮け(うけ)などと呼ばれる紙の層が、紙質や貼り方を変えて丁寧に張り重ねられています。

このように和紙を幾重にも張り重ねることにより、紙の引きで組子の障子の格子が固定され、木材のひずみを防止します。この構造が、ふすまを丈夫にするとともに、吸音効果や断熱効果、調湿効果などを生み出します。こうした機能を備えたふすまは、日本の高温多湿な気候に適応した建具として、長い間日本人の生活のそばにあるものでした。

実は、そうした馴染み深い建具としての役割の下に、ふすまは歴史資料としての顔を隠しています。
先にも述べたように、ふすまはたくさんの和紙を張り重ねて作られているものです。
紙が貴重だった時代、江戸の人々は役目を終えた文書を反故紙として、ふすまの下張りに用いていました。これを「下張り文書」と呼びます。
この「下張り文書」には、江戸後期から昭和初期にかけての文書を中心に、役場文書・村方文書・庄屋文書・大福帳・個人の手紙や日記・新聞にいたるまで、実に多様な文書が用いられていました。まさにふすまは隠れた歴史の宝庫なのです。これらの文書は、地域や家の歴史をひもとく貴重な歴史資料として注目され、様々な分野で活用されています。 

当講座では、そうした「下張り文書」を歴史資料として利用できるようにするために、①解体前の現状調査、②下張りの解体、③下張りに用いられている文書の整理と保管の作業を通して、ふすまの裏側に用いられた文書がもつ歴史資料としての役割や、ふすまの構造について学びます。

さて、私がお邪魔したのは4回目ということで、既に下張りを解体する作業に入っていました。

現在、講座で使用しているふすまは、明治時代の高知県の思想家であり、自由民権運動の理論的主導者であった植木枝盛の旧居のふすまです。
枝盛が『東洋大日本国国憲按』を起草し、36歳で亡くなるまでの14年間を過ごした旧居が、高知市桜馬場に残っていたのですが、2010年、老朽化のために取り壊されました。建物のうち、書斎部分については高知市立自由民権記念館に移設されています。現在、枝盛邸のふすまを解体する作業が当館と自由民権記念館と共同で行われています。講座ではその中の一枚をお借りしています。

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写真の右上の方に見えるように、ふすま一枚一枚に整理番号がつけられています。
この写真は「植木邸のふすま、29枚目、表面、12層目」という意味です。

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これがふすま解体の七つ道具です。ハケやのり、スポイトや筆、ペンチと様々な道具があります。

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基本的には竹ベラを使い、上から順番に和紙を外していきます。
この竹ベラは、第一回目の講座で受講生の皆さん自身が作った物なんですよ。

はがしていく度に新しい層の紙が登場してきます。
重ねて合わせて複雑な模様といいましょうか、パズルのようになっている和紙の組み合わせを、皆さん楽しそうにはがしていらっしゃいました。

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木枠が紙を噛んで外しにくいところは、かなづちで叩いたり、ふすまバールで緩めたりして、紙が破れてしまわないように丁寧に外していきます。

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その際、はがされた紙がどの部分にあったのかを記録し、番号札をつけていきます。これは資料整理において非常に重要なことで、出所が同一の記録・資料を他の出所のそれと混在させないようにしています。

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紙同士の接着が強いものは、霧吹きで湿らせて外します。
洋紙は水に濡れるとすぐに破れてしまいますが、植物繊維でできている和紙は洋紙と比べて格段に繊維が長く、紙自体が多孔質構造で表面積が非常に大きいので、布のように柔らかくなり破れにくいです。
ただ注意しなくてはいけないのは、貼られている紙が近代のものになってくると、文書を墨ではなくて筆ペンなどで書いている場合があるらしく、安易に水を使うと文字が滲んでしまうこともあるようです。

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一層一層丁寧に和紙を外し、この日は15層目までたどりつきました。
この15層目はそれまでの層とは違って、文字の書かれていないまっさらな紙が整然と貼られていて美しく思えました。この下からはまた違う、絵のようなものが描かれた紙が覗いていて、受講生の方は次回が楽しみだと仰っていました。

ふすま下張り解体講座は毎月第4木曜日に行っています。
登録制の講座ですが、途中からの参加も受け付けておりますので、もし興味のある方がいらっしゃればぜひご参加ください。

また、皆さんの中に、古くなったふすまの処分をお考えの方がいらっしゃれば、廃棄してしまう前にぜひ資料館にお声がけ下さい。それが、隠れていた歴史が発見されるきっかけになるかもしれません。

ちなみに、植木枝盛の旧居というのは、元々、土佐南学の祖である谷秦山の子孫の住まいでした。このふすまから、谷家関係の資料が出てくることも期待されています。
現在、資料館の常設展示では上映中の映画「天地明察」に関連して、安井算哲(渋川春海)とその弟子であった谷秦山の往復書簡など、関連した資料を紹介しています。ぜひ足をお運び下さいませ。

(投稿者:K)

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